空飛ぶITコンサルタント

中小企業診断士が「AI」「パン」「補助金」について語ります

アトキンソン「中小企業基本法が諸悪の根源」を読んで

驚く豚のイラスト

過激な論調だと思います。相変わらず脊髄反射的に賛成反対している日本人が多いことにも絶望していますが。

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規模の追求や、高生産性の追求は、F.E.シューマッハー氏が著書で語るように「金や権力を持つ一部の人たちだけに富の集中が加速する」のは避けられません。生産性を高めることが人の幸福につながるのか、一度以下の本を読んでもらうとよくわかりますのでおすすめです。

スモール イズ ビューティフル再論 (講談社学術文庫)

スモール イズ ビューティフル再論 (講談社学術文庫)

 

 すこし記事を読み解いてみましょう。 

1.低生産性を労働者の責任にしてはいけない

ここの部分は賛成。生産性とは資本家と労働者両輪の意思統一、方向性の合致、利益の合致があって促進されるものだと考えます。高性能のハイテク機器を導入したりすることで生産性が高まるものではない。たまに勘違いしている人もいるからこまったものです。

2.中小企業基本法について

俗に言う「ゾンビ企業」を生かす必要はないでしょう。その部分は賛成。反対するのは、たとえゾンビ企業であっても、その地域のアイデンティティを支えている企業は潰してはいけないと考えます。デービット氏はその辺理解されていると思いますが、編者はその辺分かっていない可能性があります。都会に視点を置きすぎるとも悪、田舎に軸足を置きすぎるもの駄目。

地方都市と大都市圏を行き来し、定期的に両環境の中でビジネスをすれば、こんな編集にはならない。少々視野が狭く残念。

 

3.日本人に欠けているのは、徹底的な要因分析だ。

打ち出し方が過激なので、私も思わず脊髄反射しそうになりますが、これは残念ながら図星、核心をついている。日本人は問題が発生した後の活かし方が本当に下手くそな人が多い。この真逆を言っているのがアメリ海兵隊

アメリカ海兵隊―非営利型組織の自己革新 (中公新書)

アメリカ海兵隊―非営利型組織の自己革新 (中公新書)

 

 

4.規模が大きければ生産性が高くなるというのは、先ほども申し上げた経済学の鉄則のとおりです。

これはひどい。このような薄っぺらい論調が幅を利かすから世の中良くならないんじゃないか。これは本当にデービット氏が言った言葉なのかな...編者が付け足したのではと疑問符が付く部分。ビルは高ければ高いほどいい理論じゃないか。もういらんよ高いビル

規模の経済の理論は有名ですが、一定のラインを基点として、コストアップ倍率が増え、生産性が下がっていくのが経済の鉄則じゃないか。氏はそこまでバカじゃないと期待したいけど。

企業全般に言えることだけど、各事業会社社得意な案件規模って持っていて、A社は5,000万くらいの受注金額一番利益率が高い、B社は1億くらい、とボリュームゾーンがあって、それが差別化の要因になっている。これを全部鍋にぶちこんでグルグル混ぜるとあら不思議「受注金額は高ければ高いほど儲かります」なんてなるかよ。都会には都会の、地方には地方に適したサイズの経済が必要なのは簡単な理論じゃない。

5.将来性のある中小は伸ばして、退場が適切な中小は退場いただく

これは私の考え、ではなく冨山 和彦氏NHKスペシャル「大廃業時代~会社を看取(みと)るおくりびと~」で述べていた意見。これからの日本に求められている考え方だと思う。

デービット氏が言うように「何でも生かしていく」方向には中小企業診断士としても反対。取引先や関係者に迷惑のかからない早いタイミングで退場いただくべき。

ただし何度も言うように「大企業を増やせ」「高生産性を追求」という薄っぺらい意見は絶対反対。 日本は起業家が少ないという問題もよく持ち上げられますが、GoogleだってFacebookだって最初は中小企業で、夜な夜な開発していたのでは?

 

以上です。