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雪不足の札幌藻岩スキー場「5時間券1,500円券」の値引に経営を学ぶ!

札幌藻岩スキー場とは

札幌藻岩山スキー場は札幌中心部から車で30分のスキー場です。初心者向けのファミリーゲレンデから上級者用のうさぎ平、ダイナミックコースまで揃っている合計10コースからなるスキー場で、特徴は札幌南区の市街地を觀ながら、なだらかなに滑る初心者向けの3km観光道路コースです。

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著者撮影(絶景)

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https://www.rinyu.co.jp/moiwa/

私も昔は子供の頃から、今は小学校低学年の子供とよく行くスキー場で、30年位お世話になっています。最近は他の競合スキー場の例に漏れず、中国・台湾の観光客のスキー体験もやっています。

そんな藻岩スキー場も今年は雪不足でピンチ

藻岩山スキー場も私が行った1月18日時点で10コース中3コースしか滑走できません

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著者撮影(雪不足でコースにバツ印だらけ...)

これはかなり集客が厳しい。何故なら札幌藻岩スキー場が持つリソースが30%しか発揮できない訳ですから、ファミリー客に強みを持つ藻岩スキー場も魅力も半減、客足が鈍ります。1月冬休み明け前の書き入れ時に非常に厳しいでしょう。

そこで今回の1手「5時間券1,500円」

そこで札幌藻岩スキー場の対策はなんと「大人は55%、子供は45%のディスカウント」。お父さんお母さん、子供2名で5時間たっぷり滑って通常価格12,000円のところ6半額の6,000円って凄まじい破壊力じゃないですか。

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(著者購入のチケット,右上に1,500の印字)

参考)普段の札幌藻岩スキー場の5時間券は「大人3,300円」「子供2,700円」

料金表は藻岩スキー場HP(https://www.rinyu.co.jp/moiwa/)2020/01/18時点。

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スキー場のリフト稼働がポイントの"値引設定"

道外の方に説明します。北海道のスキー場の主要顧客ははこの時期、雪が無いと出足が鈍る気まぐれな道内一般客ではありません。答えはスケジュールも決まっていて、売上も固定されている「スキー教室」主要顧客です。教室の生徒を気持ちよくスキーを滑ってもらって、来季も「スキー教室」に来てもらえるように企業努力します。だから「スキー教室」のコースであるファミリーゲレンデは雪をかき集めてコースオープン、関連するリフトも動かす訳です。

しかし「スキー教室」と現状の客足だけでは、リフトやロッジなど設備稼働費用、スキー教室の教員の賃金、つまり固定費+変動費=費用は賄えなかった断言できます。賄えるなら今回の強烈なディスカウント施策は打ちません。詳しくは以下の図を持って説明します。

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1.売上予算

通常の積雪の場合の売上予算のラインを仮に起きます。

2.定価売上

但し今年は雪不足で限られたコースしか開場出来ず、消費者の来場誘因が働きません。簡単ですね。去年は10コースを5時間3,300円だったのに、雪質も悪くゲレンデは削れてガリガリなのに3コース5時間3,300円取られたら嫌ですよね。オーストラリアのインバウンドが雪質を求めてニセコに大挙襲来するのは高品質の雪があるからです。

結果、消費者道内客)もまだ雪があって雪質が良い札幌国際スキー場とか小樽のオーンズといった比較的雪に恵まれているスキー場まで遠出することでしょう。ガソリン代と天秤にかけながら。

3.1,500円売上

しかしどうでしょう。売上頭(筆者仮説)のコスパに優れた5時間券をいっそ半額にしてしまえばどうでしょう。3コース開場といえども我が家もスキー場の行き先出発1時間前に変えてしまう程の誘因が働きます。だってありえないほどのコスパですから。結果来場者が増加し、2.定価売上のラインから売上総額を押上る効果が期待できます。

今日の学び:逆風の中でも先手を打つ企業だけが生き残る

2019-2020の雪不足で日本各地で影響を受けたその他企業は、その不運を嘆きながらも、人工降雪機などを使って例年通りの「商品品質の回復」を目指していたのではないでしょうか。いい商品を準備すれば売れる、と考えるからです。職人視点の着想です。

一方、札幌藻岩スキー場柔軟です。商品の品質を高めるにもコストがかかる(人工降雪機の電気代や水道代もコスト増)から、いっそ品質のバランスを取りながら値引して沢山売って乗り切ろうと考えました。商人の発想です。

以上です。おそらく札幌藻岩スキー場はこのような雪不足を経営リスクとして想定し、インシデントレスポンスプランを設定していたと予想します。少しでも傷口を少なくしようとする企業努力を子供と一緒にスキーしただけですが、色々見えて勉強になりました。