ITプロジェクトの問題は「コミュニケーション」起因だと再認識する
「人月の神話」
「人月の神話」を読まれたことがあるでしょうか。
SESを否定するような野暮ったい内容ではありません。人と月は交換可能である「人月」の前提を否定する本です。システム開発で高確率で発生するスケジュール遅延に「人と月は交換可能である」前提で人を投入しても遅延幅が広がるだけ、とブルックスの法則を引き出し解く本です。
- 作者: フレデリック・P・ブルックス Jr.,滝沢徹,牧野祐子,富澤昇
- 出版社/メーカー: ピアソン桐原
- 発売日: 2010/12/14
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
- 購入: 10人 クリック: 91回
- この商品を含むブログ (50件) を見る
この本を読了したとき、プロジェクトを成功裡に終わらせるには、マネージャの力量に寄るところが大きい、と改めて感じました。
なぜプロジェクトマネージャーなのか
答えは簡単。末端のエンジニアが優秀でも、プロジェクトを成功に導くことが出来ないからです。
・巷のシステム開発案件は見積もりも粗々、要件もフワフワ、設計も御座なりなプロジェクトが少なからず存在し、不確定要素に満ちた世界であるのは業界人ならみな知る所である。
・「人月の神話」が否定をしても、巷の末端のエンジニアは「人月」で交換可能である部品であると見なされ、マネージメント層の力量が不確定要素をシステムに落とし込む中心的存在になり、プロジェクトの成否に与える影響は極めて大きい。
・末端のエンジニアが、設計通りに成果物を収めても、顧客のニーズとかけ離れることはよくある話。この辺に設計技術の未熟さ、上流の要件定義の曖昧さが垣間見える。
・「とりあえずリリースしましょう。追加機能は完成後順次追加します」となる。
「このバージョンはベータ版です。バグはありますがご愛嬌」みたいな自動車に乗りたいやつがいるか、という話です。ITプロジェクトがプロジェクトの発足時に定められたKPIを満たせないのはなぜでしょう。
それはプロジェクトマネージャが適切な力量を持っていない為です。
プロジェクトに適切な力量を持つマネージャーのアサインがプロジェクト成功の第一要因で、マネージメント層の成長が不確定要素の幅を縮める近道です。
問題は「コミュニケーション」が引き金となる
長年IT業界にお世話になる身として、プロジェクトの問題は「コミュニケーション」が原因となることが多い、と考える所です。
マネージャー自身がコミュニケーション図内で「伝言ゲーム」が100%正確に伝わる手助けを継続的に怠らなけば、プロジェクトは良い方向を向きます。正しい情報で成果物を作れば正しくなる。これは当たり前の話です。
「コミュニケーション」は「伝言ゲーム」
・先日久しぶりにNHKドラマ「坂の上の雲」の日本海海戦の回を見ました。敵鑑に向けて砲を発射する射角の決定は甲板にいる砲雷長、実際に砲の射角を調整するのは砲の近くにいる士官と兵です。
・見方を変えると「敵艦より先に、敵艦に自艦から発射する砲弾を当てるプロジェクト」のKPIを満たそうと、砲雷長と士官、兵たちは文字通り「命をかけて」頑張っています。
射角を決める「敵艦までの距離」の情報伝達は「拡声器」(メガホン)と「距離時計」の2系統が描写されています。この辺にITプロジェクトにおける情報伝達のヒントがあります。
「なんで距離7,000で発射しているだ!ちゃんと距離6,400って言ったじゃないか!」と兵を詰っても敵艦に砲弾は当たらず、600m遠方の海面に無駄に落ちていくだけです。そんな士官(マネージャー)は二流、三下です。
必要な情報を必要筋に伝え"理解"してもらうがコミュニケーションの目的です。コミュニケーションは念押し重視、多系統でかつ大勢に行うべきなのは歴史が証明しています。
しかしITプロジェクトの情報伝達の現場はどうでしょうか。
「昨日言ったじゃないか!なんで理解しないんだ!」
「メール送ったんだけど見ていないの?」(これ酷いですがよくあります)
こんな事を言い出しても、敵艦からは湯水のように砲弾が飛んできます、命の危険にさらされるわけです。実際にはエンジニアの士気低下、進捗遅延等が発生します。
そんな敵艦から先に砲弾を当てられそうなマネージャは近くにいませんか?
ほら、あなたの後ろにも...