「事業承継」に対する違和感(中編)
ヨシダです。今日は「事業承継」の話。前中後編に分けて書いていきます。
今日は後編中編、「事業承継」に対する国策についてです。
(書いていたら長くなったので、3部作に...)
前回話した違和感、「画一的な事業承継対応」「引退後のベテラン経営者の活かし方が不明確」の続きです。
ここで視点を変えて、国の施策を確認しましょう。
1.平成30年事業承継税制改正(中小企業庁)
[改正前]
・納税猶予になる株式は2/3の上限があり、相続税の猶予割合は80%
・相続後5年で8割の雇用の維持。守れない場合猶予取り消し。
・一子相伝(1人の経営者から1人の後継者へ)
[改正後]
・相続後5年で8割の雇用の維持。守れない場合でも経営悪化など理由があればOK
・1人の経営者から、最大3名までの共同後継者へ相続しても税制適用
[結論]
この改正を見ていると、後継者がいかに税制面で苦しんでいるか、それを理由に承継を拒んで、諦めていたかがよくわかりますね。
[補足]
2.人生100年時代構想(内閣府)
次は行政が人生100年と言い始めた件。
100歳と比べれば比較的若いベテラン経営者が事業継承とはいかがなことでしょう。
どういうことか、調べてみました。
[第1回 人生100年時代構想会議要約]
資料3:「人生100年時代構想会議」の目的と主要テーマ 1項
人生100年時代構想会議の具体的なテーマ
①全ての人に開かれた教育機会の確保、負担軽減、無償化、そして、何歳になっても学び直しができるリカレント教育
②これらの課題に対応した高等教育改革※
※大学にしても、これまでの若い学生を対象にした一般教養の提供では、社会のニーズに応えられないのではないか。
③新卒一括採用だけでない企業の人材採用の多元化※、そして多様な形の高齢者雇用
※これが有能な人材確保のカギであり、企業にしてもこれまでの新卒一括採用だけではやっていけない。
[結論]
会議名と主要テーマについては、あくまで高等教育(主に大学)の改革と労働市場の流動化に視点が向けられています。経営者の文字は1件もありません。
[補足]
2007年生まれの日本人が100歳まで生きる可能性が50%とLIFE SHIFTの著者リンダ・グラットン氏が提唱しており、その辺も根拠付けとされているようです。
3.生涯現役起業支援助成金(厚生労働省)
中高年者が起業する場合に受けられる補助金です。
新たに起業する中高年には資金提供とはいかがなことか、調べてみました。
[概要]
1.雇用創出措置助成分
中高年齢者( 40 歳以上)の方が、起業によって自らの就業機会の創出を図るとともに、 事業運営のために必要となる従業員(中高年齢者等)の雇入れを行う際に要した、 雇用創出措置(募集・採用や教育訓練の実施)にかかる費用の一部を助成します。
2.生産性向上助成分
[分かり難いので要約]
・40歳以上の方が起業し、12ヶ月以内に60歳以上の方を2名、もしくは40歳以上の方を3名雇入れ、離職せず定着していること。
・60歳以上の方が起業すると補助金UP。
・人材に必要になる求人広告・説明会費・人材教育にかかった費用の一部を助成。
[結論]
助成額はそれほどでもないですが、中高年を雇用するための一連の費用、広告、募集、教育における一連の費用を助成いただけるということです。
今日紹介した国の動きや施策の中で、はじめてベテラン経営者に関係する施策がでました。後継者に会社を譲った後「いままでは柵があって出来なかった新しい事業」を新会社で展開するときの、人材に関する資金援助のメニューが揃っています。これはいい。
4.総論
国の施策が後継者に注力、ベテラン経営者のその後は放置なのはさすがに寂しいと考えていましたが、多少なりとも施策が見つかったのが幸いでした。探せばまだありそうです。
次回後編は、日本人の起業年齢統計から、ベテラン経営者の怒りを探ります!