空飛ぶITコンサルタント

中小企業診断士が「AI」「パン」「補助金」について語ります

「事業承継」に対する違和感(前編)

ヨシダです。今日は「事業承継」の話。前後編に分けて書いていきます。
正直な所、巷で起こる「事業承継」の議論には不満を感じます。

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[1.なぜ今「事業承継」なのか]

社会に身を置く方であれば、最近と「事業承継」いう言葉を見ない日はないのではないでしょうか。犬も歩けば事業承継に当たる程、巷では「事業承継」が叫ばれて止みません。
ではなぜ事業継承なのでしょう。中小企業白書2017年版から説明します。

1-1.法人の倒産は少なくなったが、休廃業・解散件数が過去最高

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(中小企業白書2017 31項)
興味深いグラフです。2000年前半のITバブルから就職氷河期にかけて資金繰りに詰まった倒産件数が、それ以外の理由により店じまいする休廃業・解散件数が上まわり、2016年度には3.5倍の開きが出ています。

1-2.休廃業・解散企業の47%は、70歳以上の経営者

f:id:yoshidaagri:20180417051732p:plain(中小企業白書2017 33項)

このグラフは、中小企業全体(右端)の70歳以上経営者が全体の24.1%に対して、休廃業・解散企業に対する70歳以上経営者が全体の47.7%を占めることを指摘するグラフです。

1-3.休廃業・解散企業の経常利益率は50.5%が黒字

f:id:yoshidaagri:20180417052236p:plain(中小企業白書2017 34項)

これはもったいないですねというグラフ。白書では以下のように説きます。
この利益率の水準について生存企業と比較すると、これを上回る休廃業・解散企業は32.6%であった。平均的な生存企業を上回る利益率でありながら、廃業した企業が全体のうち約3割存在することが分かる。

 1-4.結論

総括すると

「休廃業・解散企業が多い」

「その理由も経営者の高齢化・後継者難で資金繰りによるものではない」

「黒字企業も半数以上あり、中には優良企業も3割存在する」

もったいないよね!継がせようぜ!という結論でしょう。

[2.右向け右の国民性の弊害]

行政も「起業側だけを助けるだけじゃダメだな」と「事業承継」を支援しはじめ、
各金融期間は挙って「事業承継」の支援部署を新設し、フォローしていく姿勢を明確にし、新聞を始めとしたマスコミ各社は囃し立てています。
但し、70歳以上のベテラン経営者の皆様は、違和感を持たれているのではないでしょうか。私のような経営者でもない若造でも、昨今の「事業承継」大合唱は違和感を感じて止みません。何故なら
「休廃業・解散企業に70代以上経営者が多いのは結果論」
「今存続している70代以上経営者の法人は事実存続している」
「気力には個人差があり、元気な経営者に無理やり引退レールを引くのは非効率」
木を見ずして森で語っても一般論なんですよね。これが違和感の根幹です。

[3.引退後の経営者の活かし方が不透明]

 私が不満なのはは一番上のイラストで言うと、バトンを渡した後のベテラン経営者の活かし方に無策という1点。
グラフのような統計論だと、70歳以上の経営者が全て悪者扱いされる傾向にあります。恐るるなかれ、70歳以上の経営者って、戦前戦後復興の中で生まれ育った苦労人。昨日の今日まで第一線で頑張っている経営者を、いきなり一元的に「老人」扱いするのはいかがなものかと。これ日本人の悪癖ですよね。穿って見る癖が無いというか...
私は「高齢化社会で、ベテラン経営者の皆様には、今以上に頑張ってもらいたい」と強く思う所です。
 
 
時間が無くなってきたので、続きは次回。
行政のベテラン経営者の活かし方施策から紹介します。

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